文字と発音


◾️文字

    シャカルは独自のアブギダ式の文字「イーシャ」を用いて表記される。また、イーシャには主に4種の書体があり、TPOに応じて使い分けられる。しかし、現状はフォントが存在しないため、コンピューター上では主に特殊文字を含むラテン文字(稀にキリル文字)で転写されるのが常である。以下に各書体(レクタイーシャについては書き順も)を紹介する。
1) レクタイーシャ(正字体)
    最も基本となる格式の高い書体。行政文書や勅令などの公式の書類や祝詞などは必ずこの書体で表記される。また、木版印刷による出版物も殆どがこの書体である。ラニンイーシャを元に、チャーリカサコ王の時代にヴァクタサカルによって整理された。
2) シャルパイーシャ(速字体)
    日用の書記に多く用いられる筆記体。
3) ラニンイーシャ(古字体)
    イーシャの古代文字。現在は主に碑文に用いられ、それ以外の使用は一般的でない。また、この書体には前舌母音(äüö)を表す文字は無く、äはa、üはu、öはoで表記される。これはラニンイーシャの成立後に前舌母音が出現した歴史的経緯による。
    イーシャは22のヴーツェイーシャ(基字)、8のケトライーシャ(声字)、8のケトラターク(声記号)、5のカルガターク(変声記号)、そして各種約物で構成される。
    基字は単独では必ず随伴母音aを伴って読まれる。また、母音はシャカルではケトラ(声)と呼ばれ、各母音は「母音+ケトラ(a=アケトラ、i=イケトラ、u=ウケトラ等)」で呼び表される。
    変声記号にはナケトラツィク(無母音点)、レーケターク(長記号)、ピワツィク(太陽点)、ソキャイターク(弱イ記号)、チョヴーツェターク(促音記号)があり、ナケタツィクは付加される基字の随伴母音を取り除き末子音とし、レークタークは母音を長母音化し、ピワツィクは撥音を付加し、ソキャイタークは付加される字を拗音化し、チョヴーツェタークは直後の字を促音化(二重子音化)する。
    約物には主にケルンツィク(文節点または語間記号)、タゴターク(コンマ)、チョタゴ(またはチョタゴターク、ピリオド)、エスタターク(文頭記号)があり、ケルンツィクは欧文のスペースのように文節の区切りごとに置かれ、タゴターク・チョタゴはそのままコンマ・ピリオドの役割を持つ。ただし、人名や名称、単語などを単独で表記する際にはタゴタークが置かれる。エスタタークは文章の表題や詩、祝詞の文頭に置かれるが、インフォーマルでは必須ではない。

◾️発音

    以下にラテン文字転写とその音価を示す。なお以下に示すのはあくまでも規範的な発音であり、実際には発話速度や話者によっても若干の違いがある。
⚫︎子音
p:/p/日本語のパ行に同じ
b: /b/日本語のバ行に同じ
m: /m/日本語のマ行に同じ
w: /w/日本語のワ行よりも唇をしっかりすぼめる
f: /f/英語のFに同じ
v: /v/英語のVに同じ
s: /s/日本語のサ行に同じ
š: /ɕ/日本語のシャ行に同じ
c: /t͡s/日本語のツの発音に同じ
z: /d͡z/日本語のヅに同じだが/z/も許容
č: /t͡ɕ/日本語のチャ行の発音に同じ
j: /d͡ʒ/日本語の語頭のジャ行に同じだが/ʒ/も許容
t: /t/日本語のタ行の発音に同じ
d: /d/日本語のダ行の発音に同じ
n: /n/日本語のナ行の発音に同じ
l: /l/英語のLに同じ
r: /r/ロシア語やイタリア語のような巻き舌(震え舌)
y: /j/日本語のヤ行に同じ
k: /k/日本語のカ行に同じ
g: /g/日本語のガ行に同じ
ṅ: /ŋ/鼻濁音のガ、ハガネのガ
h: /h/母音を伴う時、日本語のハヘホに同じ。末子音では/x/空気の摩擦を伴うハ行、中国語のㄏ(h)

⚫︎母音
a: /ä/日本語のアに同じ
i: /ɪ/~/i/日本語のイよりも唇を横に引く
u: /ʊ/~/u/日本語のウよりもしっかり唇を丸め舌を奥に引く
e: /ə͍/から/ə/いわゆる曖昧母音(シュワー)だが規範的には唇を横に引く
o: /o̞/~/o/日本語のオよりもしっかり唇を丸める
ä: /ɛ/~/æ/前舌のa、アとエの中間音
ü: /ʏ/~/y/前舌のu、ウとイの中間音
ö: /ø̞/~/ø/前舌のo、オとエの中間音

    また、厳密には母音は長短によって僅かに音が異なる


 a i u e o ä ü ö

/ä ɪ ʊ ə͍ o̞ ɛ ʏ ø̞/


 aa ii uu ee oo ää üü öö

/äː  iː  uː  ə͍ː  oː  æː  yː  øː/

⚫︎撥音

⚫︎末子音